愛着ってなんだろう

これまでこころのサイエンスでは、心理学の概要から心理療法、児童虐待、自殺予防、デマ、怒りなどメンバー各々がその時に感じたこと、伝えたいと思ったことを取り上げてきました。
今回は「愛着」についてお伝えします。

愛着と聞いてみなさんは何を想像するでしょうか。
「このぬいぐるみには愛着がある」など、対象とされるものに何かしらの特別な思いがこもった印象を受けますが、発達心理学の世界ではボウルビィの理論が有名です。
乳幼児が特定の親密な対象者との間に形成する結びつきのことを「愛着」といいます(アタッチメントともいいます)。

赤ちゃんの「8か月不安(人見知り)」が始まるのは、親密な対象者と他人を区別できるようになったからであり、対象者との愛着が形成された証ともいわれています。
さて、乳幼児期に愛着を形成できなければ人はどうなるのでしょうか。

乳幼児期に自分の行動(接触・接近)に対して一貫して応答(笑いかけや抱っこなどを)してくれる養育者がいないことを「母性剥奪(マターナル・ディプリベーション)」といい、この状態が続くとその後の心身の発達に影響を及ぼすといわれています。
特に精神的な安定が満たされないため、その後の人間関係の構築に問題が生じることがあります。

ただし、乳幼児期に愛着形成が出来ていなかったからといって全員が問題を起こすわけでもなく、遅れて愛着を形成させることも可能だそうです。

また、この「母性剥奪」とともに切り離せないのが「ホスピタリズム(施設症)」です。
これは施設や病院で生活をし、母性的な養育が欠如している子どもの多くには心身の発達の遅れや情緒の障害、ゆがみなどがみられたことから乳幼児期の母性的養育の必要性を訴えたものです。
乳児院などでは特定の大人との愛着を形成するため、養育が担当制となっています。

以前「子どもたちの未来」で紹介した里親制度は、こどもは”なるべく家庭において養育されるべきである”という家庭養育優先原則に基づいたものですが、家庭に近い環境での養育が望ましいというのは、家庭での愛情を受けてこれから健やかに育っていくことが子どもにとっての「希望」に繋がるんだろうなと思います。

(ここ2作連続で真摯に記事を書きました。次回はゆる~い心理学のお話でもできればと思います。ぜひ次回もお付き合いください!)

【参考文献・参考資料】

【参考サイト】

アクセス日:2021/09/15
徳島赤十字ひのみね総合療育センター 園長のひとりごと

https://www.hinomine-mrc.jp/pages/56/detail=1/b_id=437/r_id=125


著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはこころのサイエンス編集部
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