サイボーグ009の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
7月19日は「サイボーグ009の日」
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。7月19日は「サイボーグ009の日」に制定されています。これは株式会社 石森プロが制定したものです。1964年7月19日に石ノ森章太郎の漫画である「サイボーグ009」が週刊少年キングで連載を開始したことを記念したものです。「サイボーグ009」は特殊能力を持った国籍の異なる9人のサイボーグが悪に立ち向かうSF漫画であり、累計発行部数は1000万部を超えている大ヒット漫画となっています。サイボーグ009は作品の完結前に作者が死去したため、作者自身によるオリジナルの完結はしていないものの、その後も漫画やアニメが制作され、人気を誇っています。
では、サイボーグと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
「サイボーグ」とは
そもそも「サイボーグ」という言葉は英語で「Cyborg」とは「Cybernetic Organism」(サイバネティック・オーがニズム)の略称です。これは、生物に機械的なパーツや電子回路などを組み込み、その能力を向上させることを総称する用語です。サイボーグ009などのSF作品やアニメなどによく登場する概念ですが、現実においても科学的な研究開発が進められています。サイボーグの具体的な例としては、人工臓器を装着した人間や義肢を機械的なパーツで代替した人間などが挙げられます。また、昆虫に電子デバイスを装着して制御するサイボーグ昆虫などの研究も進んでいます。
そして、このサイボーグという言葉の元となっているサイバネティック(サイバネティクス)という用語は心理学辞典にも掲載されています。元々、サイバネティクスとは数学者のノーバート・ウィーナーによって提唱された「情報と制御の系」に関する学問を指し、生体系と機械系、あるいは社会システムにおける通信と制御、情報処理を統一的に取り扱う学際的な総合科学であると定義されています。ウィナーは14歳でハーバード大学・大学院に入学し、18歳で数理哲学の学位を取得するなど神童とよばれるほどの天才でした。その後、ウィナーはマサチューセッツ工科大学の教授となり、応用数学や通信工学、生理学,心理学などの幅広い分野で研究活動をしています。ウィナーの研究には心理学も含まれており、そこでサイバネティクスと心理学にも関連性が生まれています。
サイバネティクスとは
さて、サイバネティクスの話に戻りますが、そもそもサイバネティクスとは「舵取り人」を意味するギリシア語に由来しています。これは、船の操縦において風向きや海流の状態(人間には制御不能な変量)の過去から現在にいたるまでの値に基づいて、舵の方向(制御可能な変量の値)を適切に定め、船が最短コースの航路(人間に最も都合のよい状況)で進むようにする方法、これをサイバネティックスであると説明しています。サイバネティックスは自動制御装置の実用的な研究だけでなく、科学方法論や認識論などの哲学・思想の領域にまで大きな影響を与えています。特に心理学では、その影響は広範な領域に及んでおり、人間を「情報処理系」の一種と見なし、精神的な能力特に知覚・認知などのような人間に独自な情報処理特性と行動の制御特性を解明しようとする研究の方向性を生み出すきっかけとなっています。現在の知覚心理学や認知心理学には、少なからず、サイバネティクスの考え方が影響を与えているのです。
サイバネティックスには重要なキーワードとして、フィードバック(バイオフィードバック)というものがあります。バイオフィードバックという用語は、個人の単独あるいは複数の生理反応に関する情報を視覚・聴覚・触覚など知覚可能な刺激に変換して本人に呈示することにより、生理心理学的な観点から状態を把握し、自己調節を促進しようとするアプローチのことを指します。バイオフィードバックは、当初は大型の機材やモニターを利用して、自身の生理状態を対象者本人に見せるという手法が取られていました。現在では、タブレットやスマートフォンなどを活用して、WifiやBluetoothによる無線でのデータのやり取りが可能となり、より身近で、より簡単に実施できるようになってきています。
最後に
このように、サイバネティクスという概念は私たちの心理に様々な形で影響を及ぼしている重要な要素なのです。

著者・編集者プロフィール
この記事を執筆・編集したのはこころのサイエンス編集部
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