遺言の日と心理学

遺言の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか

1月5日は「遺言の日」

日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。1月5日は「遺言の日」に制定されています。これは公益財団法人・日本財団が制定したものであり、日付は「い(1)ご(5)ん」(遺言)と読む語呂合わせが由来となっています。この1月5日などの時期は正月で家族が集まる機会も多く、遺言について話し合えるからという要素もあります。また、相続のトラブルを少なくできる遺言書の作成の普及が目的となっています。

遺言とは、民法上の法制度における死後の法律関係を定めるための最終意思のことを指します。また、法律上の効力を生じせしめるためには民法に定める方式に従わなければならないとされています。

では、遺言に関連して、死と心理学にはどのような関係があるのでしょうか。

終わりを知ることで、人生が深まる

人間がどのように死というものを理解しており、死からどのような心理的な影響を受けるのかについては、スイスの精神科医・心理学者であるエリザベス・キュブラー・ロスの研究が有名です。ロスは死の受容や喪失体験における心理的プロセスを体系的に明らかにする研究を実施しました。ロスは数百人の末期がん患者と面接を実施し、死に直面した人々が共通して辿る心理的なプロセスを提唱しており、これは死の受容の5段階モデルとよばれています。このモデルは具体的に以下のようなものになります。

第1段階:否認

「まさか自分が」「何かの間違いだ」と現実を受け入れられず、

ショックを防ぐための防衛反応が働く段階

第2段階:怒り

「なぜ自分が」「他の人は元気なのに」と怒りや不公平感を感じ、

周囲や医師、運命などに対して怒りを向ける段階

第3段階:取引

「もう少しだけ生きられたら」「神様、もし助けてくれるなら…」のように、

何かと引き換えに現実を回避しようとする段階

第4段階:抑うつ

死の不可避性を自覚し、深い悲しみや絶望感が訪れ、エネルギーが低下し、静かに内省する段階

第5段階:受容

死を現実として受け入れ、心が穏やかになり、恐怖よりも安らぎや意味を見出す段階

このような5段階を経て、私たちは死を受容していくことになります。ただし、これらの段階は直線的ではなく、各段階を行き来するものであり、全ての人が全5段階を経験するわけではないことも報告されています。

文化が映す死生観、日本人にとっての5段階とは?

ロスの提唱した死の受容の5段階モデルは心理学的に防衛機制やコーピングという観点から捉えることができます。たとえば、第1段階の否認においては、強いストレスからメンタルを守るための初期的な防衛反応であると考えられます。第2段階である怒りや第3段階における取引は外的なコーピングを通して、コントロール感を取り戻そうとする試みであると考えられます。第4段階である抑うつは現実を深く受け止めるための感情的な統合作業であると考えられます。そして、第5段階である受容は自己と現実とのバランスを回復する段階であり、発達段階における心理的成熟の1つの形であるといえます。なお、このプロセスは死だけでなく、離婚・失業・被災などの状況にも当てはまると考えられます。

死の受容の5段階モデルは死生観とも関りが深いものですが、死生観は国や地域、文化の影響を強く受けるものです。では、日本人にとって死の受容の5段階モデルはどのような位置づけにあるのでしょうか。

静かな別れ、心を整える5つのステップ

日本は欧米とは異なる死生観があり、それは死の受容のプロセスにも影響を与えます。たとえば、日本人は個人の死よりも、周囲との関係の中での死を重視する傾向があります。そのため、死の受容は自分の死をどう受け入れるかよりも、周囲に迷惑をかけないように、家族との別れをどう整えるかといった他者志向的な受容としてあらわれる傾向が強いということが判明しています。

また、仏教や神道の影響により、死=自然の摂理である、輪廻の一部であるとして受け止める文化が根強くあります。そのため、西洋的な死の終末ではなく、命の循環やつながりとして受容する傾向があります。

さらに、日本人は感情表出を控える文化的傾向があるため、怒りや取引の段階が外に現れにくく、静かな抑うつや淡々とした受容として表現されることが多いとされています。

最後に

このように、死についても心理学では様々な観点から研究が実施されています。


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この記事を執筆・編集したのはこころのサイエンス編集部
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