道路交通法施行記念日と心理学の関係

道路交通法施行記念日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか

12月20日は「道路交通法施行記念日」の日

日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。12月20日は「道路交通法施行記念日」の日となっています。これは、1960年12月20日に道路交通法(道交法)が施行されたことがきっかけとなっています。この日は道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図ることが目的となっています。

では、道路や交通と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。

心が運転を左右する

心理学の応用分野に交通心理学というものがあります。交通心理学とは人間が交通環境の中で、どのように知覚・判断・行動するのかを心理学的に研究する分野です。たとえば、交通事故や渋滞といった現象を人の心と行動という側面から理解し、安全で快適な交通社会を実現するための研究などを実施しています。

交通心理学には様々な研究領域があります。たとえば、視覚・注意・判断・意思決定・運転技能などの運転行動の心理、危険察知、過信、ヒューマンエラーのメカニズムの解明などのリスク認知と安全行動、怒り・焦り・ストレスが運転に及ぼす影響などの交通違反や攻撃的運転、加齢や発達による認知・反応の変化による高齢者・若年者の運転特性に関する研究、教習や再教育プログラムの設計と効果検証などの交通教育・訓練の心理学、ドライバー支援システムと人間の協調関係に関する研究から自動運転・ITS(高度道路交通システム)の開発などです。

車やバイクの運転は複雑なプロセスに基づくものです。心理的な過程としては、知覚・認知(判断)・行動(操作)の積み重ねであることが判明しています。また、標識や他の車、歩行者、信号などの情報を視覚的に捉えるのは知覚と認知の能力が重要となりますが、高齢者の場合、視力の低下の問題があり、若年者の場合は注意の分散などの問題が指摘されています。さらに、交通状況を判断・評価し、今、進むべきか止まるべきかなどを瞬時に決定する必要もあります。しかし、リスク認知の低下や過信が事故リスクを高めてしまうことがあります。そして、車やバイクのアクセルやブレーキ、ハンドルなどの運動行動はストレスや疲労によって反応時間が遅れてしまうことが判明しています。

運転ミスの裏にある心理

交通心理学においては、交通事故に関する研究も実施されています。交通事故の約9割は人的要因、いわゆる、ヒューマンエラーによるものであるということが警察庁の交通統計からも判明しています。交通事故に関わるエラーには次の3つの種類があります。1つ目はスリップ(Slip)        です。これは操作ミスに伴う者であり、ブレーキとアクセルの踏み間違いなどが該当します。2つ目はラプス(Lapse)です。これは、記憶・注意の抜け落ちであり、信号を見落とす、ウインカーを出し忘れるなどが該当します。3つ目はミステイク(Mistake)です。これは判断の誤りであり、無理な追い越しやスピード超過などが該当します。これらのエラーの背景要因には、ストレス・疲労・過信・社会的圧力などがあるとされており、これらを分析して、再発防止策を立てることに役立てられています。

特に日本では交通心理学の知見が現場で活かされています。たとえば、自動車運転者の適性検査・再教育があります。これは運転免許センターなどで行われる運転適性検査は心理検査の開発や分析に関する知見に基づいて、注意力や衝動性を測定・評価するものとなっています。さらに、違反者講習や再教育プログラムでは、認知行動療法のアプローチを応用して危険認知やセルフコントロールの改善を図っています。 高齢者ドライバー対策も重要な交通心理学のトピックスです。具体的には、加齢に伴う注意・判断・反応時間の変化を分析し、運転支援システム(ADAS)や認知機能検査の設計に反映されています。また、サポカー(安全運転支援車)の普及にも交通心理学的知見が活かされています。

最後に

このように、交通心理学の知見は様々な形で私たちの実生活に応用されているのです。


著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはこころのサイエンス編集部
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